第4話
「奥さん、両替お願いします」
私は事務所のドアを開け、オーナーの奥さんに、レジ金の両替をお願いした。
「あれ?未来ちゃんは?あの子がレジよね?」
「……頼まれました……」
「川村さん、ごめんね。いつもフォローしてくれてありがとう。……あっ、今、玉ねぎ届いたみたい。申し訳ないけど、品出しも宜しくね」
外を見ると、トラックが到着し、玉ねぎの入ったダンボールを荷台から下ろしているのが見えた。
私は、その玉ねぎを売り場に出そうと思い、急いで未来ちゃんの元へ行き、両替金を届けた。
しかし……
「沙也加さん、レジのお手伝い、お願いします〜」
レジには3組の客がいて、1人でもやりこなせる人数なのに、またもや仕事を振ってきた。
売り場を見ると、初めて見る作業所の人が、台車を押しながら玉ねぎをどうすればいいか、悩んでいるように見える。
私は早くそっちに行って、玉ねぎを受け取ってあげたくて、
「未来ちゃん、ごめん、玉ねぎが届いたから……」
と声をかけたが、未来ちゃんは私の言葉を無視し、
『休止中』のスタンドをレジに立てた。
「あちらのレジになります」
未来ちゃんの一言で、お客様は隣のレジに並び、私は仕方なくレジに入った。
一刻も早く、玉ねぎを出さなければと焦っているのに、隣を見れば、
未来ちゃんは急ぐことなく、ゆっくり両替金をレジに入れ、それが終わると今度は何も言わずにトイレに行ってしまった。
私は優しい先輩では無く、都合のいい先輩になっていた。
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