第3話

「沙也加さん。チラシの玉ねぎ、在庫やばいです。無くなりそうです」




最近入った新人の未来みくちゃんが、私が品出しをしていると、だるそうな顔で話しかけてきた。




「あぁ、チラシの玉ねぎは、今手配しています……もし品切れしたら、お客様には、引換券で対応しといて下さい」



「えー、なんでチラシなのに、入荷個数少ないんですかぁ……引き換え券なんて、めんどくさぁ」



「テレビで、玉ねぎ健康法を紹介したら、どの店も品切れで、作業所も品薄なの。今必死に、かき集めて届けに来るから……」



「ふ〜ん……迷惑な話……。あっ!両替お願いします」




未来ちゃんは、20歳の地下アイドル。顔は可愛いが少し高飛車だ。



本来なら、レジ以外に、品出しや袋詰めなどを、みんなでローテーションでやらなきゃいけないのに、彼女は爪が痛むからと、レジばかり希望してくる。

 

それでいて今みたいに、レジの仕事までも平気で人に頼むから、

先輩のパートさんも、未来ちゃんと仕事を被るのを嫌がり、


まだ下っ端の私が、必然的に未来ちゃんと一緒のシフトが出来上がる。



「じゃあ、レジからお金抜くね……えっと、500円4枚に100円1本と50円1本10円1本に両替して来ますね」



私がレジのドロアーを開け、お金を袋に入れると、未来ちゃんは、


「優しい先輩がいて、良かったぁ〜」と、



嘘でいっぱいの言葉と笑顔を、私に向けた。



私は完全に舐められていた。

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