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樹はいろんなところに連れて行ってくれた。



「今度の休みさ、水族館行かない?」


「水族館?」


「うん。今イベントやっててさ、行ってみたいんだけど男一人で行くのもさ…」


「わかった。一緒に行こう」



私が遠慮しないような言い方で誘う樹はやっぱり大人だった。


そして、それを知っていながらもそれに甘える私は子どもだった。


中身も、見た目も。



歳の差10歳のカップルくらいいるだろうけど、樹の隣を歩くには私は幼すぎた。


周りの目にはどう映るのだろう?私はどう見られてもいいけれど、樹が変な目で見られないかだけが心配だった。



「楽しい?」


「うん!」



そんな私の気持ちを知ってか知らずか、樹はいつもと同じ優しい笑顔を向けてくれた。


きっと樹はまわりのことなんて気にしていないのだろう。



樹と一緒にいると強くなれる気がした。

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