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◇
樹は何もしなくていいと言ったけど、私は仕事を求めた。
何もしないでただでそこにいることが悪いと思った。
それと、役に立つことでしか自分の存在価値を見出せなかったから。
私は家政婦として住まわせてもらうことにした。
家事をするのは自分が望んだことで、文句は一つもなかったけど、料理をするのだけは苦手だった。
今までほとんどやったことがなかったからうまくできなかった。
それと、料理を作る時にどうしてもお母さんの味、顔、そしてお父さんの顔も思い出してしまうから。
途端に罪悪感に襲われる。
そんな私を救ってくれるのは樹だった。
「家事全部やってくれるから大助かりだよ。ほんと、ありがとね」
いつだって樹の言葉に助けられる。
樹は本当に優しい人だった。
「あ、あのさ、今度の休みどっか行こっか」
「え?」
「買い物付き合って」
「あ、うん」
スーパー以外はほとんど外に出ない私を、樹はたまに一緒に外に連れ出してくれた。
買い物に行った時は、私に洋服を買ってくれることもあった。
「外に出ないからいらない」という私に、「今度一緒に遊び行くときに着て行けばいいじゃん」と、ちょっと強引に買ってくれた。
自分のためにお金を使わせていることに申し訳ないと思いながら、でも、すごくすごく嬉しかった。
樹からのプレゼントはなんだって嬉しかった。
樹が着なくなったTシャツをもらうのもすごくすごく嬉しかった。
大きなTシャツはちょうど私にはワンピースになった。
まぁ、樹がその格好で外に行くのはダメだと言うから下にスキニージーンズを履いていたけれど。
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