がちゃりと自室のドアを開けると、ベッドの上で起き上がっている少女と目が合う。




「あ、起きた?」



そう何の気なしに声をかけると、布団をギュッと掴む少女。




「あー、ごめん。びっくりしたよね。でも、大丈夫。俺、別に怪しいものじゃないし。って、言われてあれか。んー、まぁ、ちょっと落ち着いて話そうか」



って、落ち着いてないのは俺かと心の中でツッコミを入れながら、「なんか飲み物持ってくる」と言って逃げるように部屋を出た。



「なんで俺が動揺してんだ。そんなんじゃ怪しまれるだろ。大人の余裕を持て、樹」



そう自分言い聞かせるように呟き、深呼吸をしてまたドアを開けた。




「あったかいのコーヒーしかなかったんだけど……って、何してんの?」



中に入ると、何かを隠すように勢いよく胸まで布団を引っ張る少女。




「え…?あー、あぁっ!!待って、何もしてないから、マジで。びしょ濡れだったから、その、着替えさせただけだから」


「……」


「あー、待って。そんな警戒した目で見ないでよ。勝手に着替えさせたのは悪かったと思うけど、濡れたままにしておくわけにもいかないし……。でも、それ以上は何もないから、ホントに、それは信じて」



疑いの目を向けてくる少女に、さっきの大人の余裕はどこに行ったのか、悪いことしたわけじゃないのに情けなく弁解する自分。



何やってんだ俺。


でも、この状況じゃ普通そう思われるよな…。

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