「無理だって。……たぶん、あの子、雨宿りなんてしない」



根拠のない確信に、でも何かに駆られるようにアクセルを踏んだ。




近くの路肩に車を止める。


車にあった藍色の傘を掴み、それを開きながら雨の中を早歩きで進んでいく。



と―――




「……やっぱり」



少女は、ひとりその場所に座っていた。


傘もささず。ずぶ濡れで。




相変わらずのオーラを放つ少女に、俺はなんの躊躇いもなくずかずかと向かっていった。



下を向いている少女は、その存在には気づかない。



少女の元へ行き、少女の頭上に傘をさすと、やっと少女は顔を上げ、その双眸に俺を捉えた。




そして、少女はうっすらと穏やかな笑みをこぼし、



次の瞬間、倒れた。





咄嗟に支えた体はずぶ濡れで、どうしていいか分からず、とりあえず車へ連れて行った。



ちょうどいいタオルもなく、ずぶ濡れのまま後部座席に横たわらせる。




「まいったな……、どうしよう」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る