◆
それは夕方と夜が混ざり合う時間だった。
いつもなら西の空だけが眩しいほどのオレンジに染まり、暗闇が空を埋め尽くす前の藍と橙が混在する空だけど、この日は、濃い灰色に埋め尽くされていた。
近場の出張に出ていた俺は、赤信号で止まった車の中から、今にも降りだしそうな空を睨むように見つめる。
今日は一旦会社に帰って、出張の報告書を作るだけ。
それまでに雨が降りださないことを祈りながら、車を走らせて数分。
ポツリ、ポツリと雨粒がフロントガラスを濡らした。
そして、数分も経たないうちに本格的に降り出した雨。
ワイパーで雨を払いながら、俺の心は焦っていた。
「あの子、どうしてるかな…」
思わずポツリと呟いた言葉。
常にあの場所にいる少女が気になって仕方がない。
「どうすっかなー…」
信号は赤。
あの場所へ行くには、来た道をUターンしなくちゃ行けない。
しかも、これ社用車だし。
「無理だよなー……」
ザーザーと降りしきる雨。
「さすがに雨宿りくらい…」
信号が青に変わる。
そして、スタートを切るようにアクセルを踏み、一気にハンドルを回した。
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