◇
とりつかれたように毎日その場所へ行き、誰にも声をかけられることなく、ただただ私はそこにいた。
そんな日が続いたある日のことだった――…
私は、そろそろ限界を感じていた。
体を十分に休めることもできない、満足に食事をとることもできない。
そして、見えない先のこと。
誰からも声をかけられない孤独な自分。
モノクロの世界にいる自分とモノクロの空が似ていると思った。
そのモノクロの空からポツリポツリと雨が降りだした。
私の目からは涙は出ない。
私の変わりに泣いてくれているのだろうか。
そんなことを思いながら、空を見上げ、降りだした雨を見つめていた。
だんだんと強くなる雨。
周りにいた人は、逃げるようにその場から足早に去っていった。
目の前を通る人たちは、みんな傘を差している。
私は当然傘なんて持っていない。
だけど、その場から動く気にもなれなくて、ただただ降りしきる雨の中にいた。
もう、いいかな…。
この世界に私のいる場所がないなら、もう、いいかな。
なんか、何もかもがどうでもよくなった。
私は、何のために生きてるんだろう?
あの時、死んじゃえばよかった、かな…。
そしたらもっと楽だったかもしれないね。
この雨に溶けてしまえばいいのに。
溶けて、消えてしまえばいいのに。
ザーザーと降りしきる雨。
ボタッ、ボタッ――…
「……え?」
遮られた雨。
モノクロの世界に、焦げ茶色の革靴と藍色の傘だけが色づいて見えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます