《モノクロ》

 

ここは夜も眠らない場所。



ネオンの明かりが煌々と輝き、人で溢れ返っている。




7年前、気づけば私はここにいた。



何かから逃げるように、ここへ来た。




ベンチのようなところにひとりぽつんと腰をかけ、通り過ぎていく人たちをただぼんやりと見つめる。



「(誰も話しかけてこないな…)」



これからのことを私は考えていた。




持っていたお金は、電車賃でほとんど底をついた。ポケットにあるのは小銭だけ。



これじゃ生きていけない。


生きていくためにはお金が必要。




でも、この年齢じゃ働くこともできない。


ちゃんとしたところはたぶんちゃんとした書類が必要だろうし、夜の仕事もいくら化粧で誤魔化しても、さすがに誤魔化しきれないだろう。



働けない。


でも、お金がない。寝床もない。




なんだってしようと思った。


生きるためならなんだって。



死ぬ気になればなんだってできる。


使えるものはなんだって使おうと思った。


自分なんてどうでもいい。



それくらいの覚悟が、今の私にはあった。




だけど、携帯電話もない今、出会い系のサイトにもアクセスできない。



ここにいてもナンパすらされない。




どうしようか。



この年齢じゃ、ネットカフェにすら入れないんじゃないか?

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