でもだからこそ、私はやらなくちゃいけないんだ。



罪悪感のかけらもなく、反省するどころか過去の一部と化して、なんの苦労もなく生きている人たちに思い出してもらうんだ。



あの子の悲しみを。苦しみを。


あの子はいなくても、彼女の意思はここにあるから。




あの子は、私にとってかけがえのない存在だった。



いつも一緒にいて、同じものをみて、同じものを食べた。


あの子が嬉しければ私も嬉しい。あの子が悲しければ私も悲しい。




私たちは、二人で一つだった。



でも、あの子は弱かった。


私よりずっとずっと弱かった。



あの子が泣いている時、私は怒っていた。


あの子を泣かせたやつらと、弱いあの子自身に。



私なら言い返してやるのに。私が代わってあげたいといつも思っていた。




でも、弱かったあの子はもうここにはいない。


いないんだ。

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