人は人を簡単に傷つける。


人は人の人生を簡単に壊していく。



罪悪感もなく。


罪悪感を感じさせられることすらなく。



だって、言葉の暴力では罰せられないから。




罰せられるのは、いつだって身体的な暴力だけ。



身体的な暴力で人が死ねば、殺人になる。


警察に捕まって、法の下で罰せられる。




だけど、言葉の暴力では捕まらない。



言葉という凶器で心をどんなにえぐっても、鋭利な刃物のような尖った言葉で心をザクザクと滅多刺しにしても。


言葉は凶器。言葉でだって人は死ぬ。




でも、他人は言うんだ。


自殺するのはその子が弱いからだと。



そう。弱い。弱いんだ。


弱い自分が悪い。



弱いから、言葉の暴力に耐えられなかった。


弱いから、いじめていたやつらに反抗できなかった。



だから、だから……



でも、


でも、いじめがなかったら、誰かに反抗しようとする必要もなかった。


いじめがなかったら、強くなる必要なんてなかった。


いじめがなかったら、辛い思いもしなかった。


いじめがなかったら、死ぬことの選択肢は生まれなかった。



だって、生まれた時から死にたかったわけじゃない。


楽しくやっていた頃は、自殺なんて考えたこともなかった。




いじめがなかったら……。



それでも、やっぱり弱い自分が全部悪い?


勝てない自分が悪い?

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