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ドックンドックンと心臓の音がうるさく拍動する。
声が震えないようにすることで必死だった。
そんな彼女に、千夏はひどく迷惑そうな、嫌そうな顔をして「そんなの知らないよ」と冷たく返した。
「そう、だよね…」
彼女は消えそうな声で呟き、顔を目一杯下げて裁縫に集中するフリをした。
もう涙が限界だった。
千夏が椅子を動かして彼女から離れたのが気配でわかった。
「あいつなんなの?」
「意味わかんない」
「うざ」
「キモ」
と、4人が顔を近づけ悪口を言ってるのはわかっていた。
他のテーブルから楽しそうな話し声がする。
ふざけてる男子生徒を注意する先生の声や、それをいじって笑う男子生徒たちの声が聞こえた。
誰も彼女のことには気づいてない。
彼女はその地獄の席から動くこともできず、ただじっと早く時間が過ぎて行くことだけを願いながら、必死に溢れる涙を堪えていた。
恐ろしいのは、ひとりになることじゃなくて、まわりの目。
哀れに思う冷たい視線。
はぶかれてる状況をまわりに知られてはいけないのだ。
きっと世間一般から見たら大したことないことなのだろう。
バカみたい。
だけど、そんなバカみたいなことが、小さな世界で生きる未熟な者には大切で、必死に守ろうとしたものなのだ。
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