P.19
仕方なく彼女も移動教室に向かう。
教科は家庭科。
運が悪いことに、自由席。
しかも、一つの大き目の机に向かい合って座る席。
それは4人で座るのに適したもの。
席はほとんど埋まっていた。
いつもと同じ、仲良しグループで集まった席。
行く場所なんてない。
彼女はこみ上げてくる涙を抑えて、いつもの、あの4人がすわる席に座った。
いつもと同じ、一人だけはみ出した席。
4人の顔は怖くて見れなかった。
でも、こそこそと文句を言っていたのははっきり聞こえていた。
それでも、彼女は気づかないフリをした。
家庭科の時間、怒っていたこともなかったことにして、「これどうやるの?」と、いつもと同じ笑顔をつくって4人に問いかけた。
私はもう怒ってないよ。
そういう態度をみせて、裁縫のやり方を聞こうとした。
でも返ってくる言葉はなかった。無視。
それを莉央が小さく笑っていたのを、朱里がにやりと口角をあげていたのを知っていた。
胸が切り裂かれるような想いだった。
でも、そこまで来たら引き下がれず、聞こえなかったのだということにして、ちょっと声を大きくしてもう一度尋ねた。
今度は一番近くにいた千夏を名指しして。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます