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【その④】
大学の看護科に通う3年生。O型。蟹座。
同世代の学生が就活に悩む中、朱里は別のことにいっぱいいっぱいになっていた。
看護師は就職難の影響をほとんど受けない。
正直言えば、選ばなければどこでも働ける。
そんなことを言えば、羨ましいと世の就活生は思うだろう。
だけど、看護師はそんなに簡単になれるものじゃない。
看護実習という関門を何度も通り抜けなくちゃいけない。
そして今がまさに地獄の実習中。
家に帰るのはいつも20時頃。
家に帰って、レポートを終えれば時計の針は2時、3時になっている。
それから3、4時間寝てまた実習地へ。
何かあればすぐ注意されるし、理不尽に怒られることもあるし、何時間もかけて作ったレポートは赤字でいっぱい。
毎日その繰り返し。
「お疲れ」
「ありがとう、大樹」
恋人の大樹が駅まで迎えに来てくれた。
それに少し疲れがとぶ。
「明日休みだろ?」
「うん、やっと休みー」
「実習どう?」
「めっちゃきつい。バイザー怖いし。ナースが白衣の天使なんて妄想だからね」
「そうなんだ。大変だね。あ、ついたよ」
「ありがとう」
大樹と話しながらアパートへ入る。
久しぶりにポストを開ければ、1週間分の手紙やら広告やらが詰まっていた。
そして、それらをガバッとつかんで取り出せば、掴みきれなかった手紙をバラバラと下に落ちる。
「何やってんだよ」
「ごめん、ありがとう」
「ん?これ何?」
そう言う大樹の手には見覚えのある真っ黒の封筒。
「あーなんかそれ変な手紙なんだよね。嫌がらせ?みたいな」
「何それ」
「わかんない。とりあえず入ろう」
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