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【その③】


藤崎紫乃ふじさきしの

英語科の大学に通う3年生。A型。獅子座。





昔から英語が好きで、英語の先生になりたくて英語科に進学したのはいいものの、ここに来て紫乃は将来を悩んでいた。




英語が必須とされる現代、就活に有利だと思われがちだけど、英語に本当に携わる職業は意外と限られている。



一般企業でグローバル社会で生きて行くならいいかもしれないけど、英語を教えるとかいう仕事は結構限られている。



それをいろんな大学の英語科の学生で取り合うのだから、英語が出来たって、就職難は回避できない。



それと、とりあえず教職とっておくか、ぐらいで教職をとってきた人で、就職難だからと教師になろうとする人達も一定数いる。



そのせいでさらに採用試験の倍率が上がっていくことになる。



どの道を通っても結局大変なわけだ。





「あー疲れたー」



一人暮らしの家に帰ってきた紫乃は鞄を落とし、そのままベッドにダイブする。


疲労で起き上がる元気はない。




「もう働くの嫌だなぁ」


ポツリとつぶやく。




将来に悩んでいる紫乃は、最近OGOBの先輩と食事に行き、いろんな意見をもらっている。


でも、どれもいいところがなく困り果てている。



教師をしている先輩は、


「教師なんてやめといた方がいい。部活ばっかりで夜遅いのはもちろんだけど、休みも全然ないよ。休みないと使うところないから、給料多くなくていいから休みが欲しいよ。」


と言っていた。



大手英会話教室に就職した先輩は、


「給料安いし、英会話教室っていっても営業の方にまわされることもあるし、本当に英語と携われるかわかんないよ。英語の先生の方が確実じゃない?」


と言っていた。



両方ともいいところ、悪いところがあるんだろうけど、今の紫乃にとっては憂鬱になるばかり。


働きたくない。というのが本音である。

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