第1話の書き出しから、独特の空気に一気に引き込まれた。
「戻れないけど過去に行けるボタン」を押した主人公が、掲示板にスレッドを立てるまでの3分以上の躊躇い——エンターキーの上に指を乗せたまま固まるその描写が、妙にリアルで温かい。掲示板という舞台でありながら、書き込みすらしたことがなかった主人公の緊張感が丁寧に伝わってくる。
「おまえら」という呼びかけも絶妙だ。スレッドを眺めていた「あの時のおまえら」と、今ここを読んでいる「今のおまえら」が違う存在だという気づきが、物語の中で静かに言語化される。一期一会という言葉の意味を、掲示板という形式を通じてこんなふうに描けるとは思わなかった。
35年前に行くために何を持っていくべきか——その他愛ないやり取りと、そこに混じる「あのスレ」への言及。掲示板の空気そのものが物語の語り手になっている。読み進めるほど、主人公が「おまえら」と呼ぶ見知らぬ誰かへの信頼感が増していく。続きが気になってたまらない。