第24話

「それでは…」


「まぁ、もう行くの?」


「えぇ…」


「そんな、一緒にお茶でもしましょうよ」


「お茶…ですか」


「美味しい茶葉があるの。いいでしょう?」




突然の誘いに思考が止まる。


いち早く颯爽と去るのが正解なのは分かっていたが、まさか誘われるとは思ってなかったし、何しろ拒否はNG生活。


咄嗟に答えることが出来なかった。




指を組んで無邪気に目を輝かすマリア様の横で侯爵様は色の無い表情を浮かべている。



ダメだとも良いとも言わない。



落ち着いた口調で「へぇー。どんな茶葉だい?」なんて聞くだけ。



嫌で仕方ないけど、彼女の望みを叶えてあげたいってところだろうか。


いつもの姿とはまるで別人。


どっち?どっちが正解なの?と心の中で焦る。





「えっと、でも…」


「えー、どうして?お忙しい?」


「忙しい訳では…」



どう返答するのが正解なのか分からなくなり、しどろもどろしてしまう。



どうしよう。


ご一緒した方がいいんだろうか。


侯爵様はどことなく断って欲しそう。


暗い顔をしている。

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