第25話
「エマ様〜。少しお時間いいですか〜?」
悩んでいるとリリィがひょっこり通路から現れた。
布地を沢山抱えて小さい手から溢れそうになっている。
「どうしたの?」
「応接室のファブリックのことで。急ぎの用がありまして」
「そう…」
「直ぐに来て頂けると助かります」
「分かった。直ぐに行くわ」
真面目な顔付きでリリィに見つめられて小さく頷く。
応接室のファブリックか…。
さっき決めたところだけど。
多分、リリィなりの気遣いだろう。
微妙な空気が流れているのを見て、助け舟を出したくなったに違いない。
リリィは優しいから。
「それなら無理ねー。残念」
「申し訳ないです」
「気にしないで。また今度」
ペコっと頭を下げるとマリア様は首を横に振って笑顔を私に向けた。
そして、そのまま何事も無かったかのように「行きましょう。リュカ」と機嫌良く侯爵様の腕に手を添えて歩き出す。
侯爵様は私を見ることはなく、ただ安堵したように「僕が相手をするよ」と隣のマリア様に微笑んだ。
どうやら断るのが正解だったらしい。
仲睦まじく去っていく2人の後ろ姿を見送り、トコトコと歩くリリィの背中を追う。
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