第19話

「分かった。直ぐに行く」



いつものヘラヘラした顔は何処へやら、表情を消した侯爵様は執事にそう告げて、ささっと服を整えた。


彼女が来てるって雰囲気で分かったんだろう。



妙に重たい顔付きだ。



私も行くと言ったけど、部屋でのんびりしてて欲しいと軽く断られ、付いていくことも出来ず。



侯爵様は用意が終わると着替える私を置いて部屋を出て行った。



一気に静かになった広い部屋の中。


何だかちょっと寂しい。


さっきまであった温もりが消えてしまった。




「エマ様〜?」



寂しく思っているとドアがガチャっと開き、メイドのリリィが隙間からひょっこりと顔を出した。


どうやら着替えの手伝いに来てくれたらしい。


モジモジしながら部屋に入っていいか聞いてくる。



その姿が可愛くて笑顔で手招きすると、彼女は“タタタ”と効果音が付きそうな足取りで、こちらに駆け寄ってきた。

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