第18話
「良かったですね」
「とってもね!」
「また言ってあげますよ」
「何っ?本当か?」
「はい」
身を乗り出して目を輝かす侯爵様に笑みを浮かべて頷く。
何だか寂しい気もするけど、仕方ないや。
それが私に与えられた役目。
この結婚のルールだもの。
「すみません、旦那様。宜しいですか?」
ちょっと感傷的な気持ちになりつつ服を整えていると部屋の外から声が聞こえた。
ドアがノックされ、返事をするよりも早く眼鏡の執事が部屋に入ってくる。
「旦那様…」
「おい。何だい、君。返事も聞かずに。僕の可愛い妻がまだ着替えているというのに失礼じゃないか」
「それは…、申し訳ありません」
「何の用だか知らないが、今ちょうどガーターベルトとストッキングが再会する感動的なシーンなんだ。じっくり鑑賞をしたい。邪魔しないでくれ」
「はい…。失礼しました」
拗ねた表情でふざけた文句を言う侯爵様に執事は焦った顔付きで真面目に頭を下げる。
私にまでペコッと頭を下げて気の毒な。
普段ノックもせずにドアを開けまくってる主の姿を見ているでしょうに。
本当に真面目な。
しかも出来ればそんなシーン見られたくない。
見ないで欲しい。
「それで?出ていけと言ったら聞かなくても大丈夫な用なのかい?」
「いえ。急ぎの用です」
「急ぎ?」
「その…、お客様がお見えになりました」
一応と言った感じで振り向いて尋ねた侯爵様に執事が歯切れ悪く用件を告げる。
チラッと私の顔を見て凄く気まずそうに。
その様子を見て直ぐに察する。
あぁ、本物が来たのね…って。
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