第17話
◆
「特別手当てを出そうと思う」
ベッドから起き上がるなり、侯爵様は頬を紅潮させて真面目な口調で言った。
興奮冷めきらぬ様子で額に手を当てながら。
ふざけてるんだか、本気なんだか、放心した顔で。
特別手当てって…。
そんなに名前を呼ばれたのが良かったのか…。
なら、その手当てで弟の新しい服を買ってあげよう…と、疲れた体を起こし、ぼーっと考える。
「そんなに良かったですか…?」
「凄くイイ!最高だったよ!」
聞くなりハイテンションで答えた侯爵様に苦笑いを浮かべる。
純粋な人だ。
素直に喜んじゃって。
でも、ちょっと複雑。
上手く真似出来た喜びと、別の人と重ねて見られている虚しさが、同時に心の中に押し寄せる。
しかし、侯爵様は無邪気なものだ。
顔を両掌で覆って照れた様子。
堪らない…!と言いたげだ。
うん。これはもう聞くまでもない。
よく想像出来たんだろう。
ここまで喜ばれたら責める気持ちも湧かない。
良かったね、の精神だ。
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