第15話

「そろそろ欲しいなぁ…」


「…ぅ、」


「いいよね?」


「はいっ…」




押し付けられれば受け入れるしかない。


熱くなった欲求を素直に迎え入れる。



嫌なのにヤメて欲しくなくて、大人しく首に腕を回して声を出すと侯爵様は薄く笑って私を見下ろした。




侯爵様はこの声が好きだ。



いや、正式に言えば“私の声”じゃなく“別の人の声”が好き。


彼はずっと私を通して別の人を見てる。



声だけじゃなく顔や体もそう。


侯爵様が長年恋心を抱いている彼のイトコと私を重ねて見てる。



本当にビックリするくらい私達はよく似てるから。


言ってみれば、私は彼女の代わり。



初恋で長年好きで夢中で追い掛けて、それでも侯爵様が振り向かせられなかった人。



そんな彼女が他の男と結婚したからこそ、侯爵様は街で出会った私を欲しがった。 



彼女と似てる私を見つけて、代わりに…と思ったんだろう。


奥様として仕える代わりに弟の治療費を出すと取引を持ち掛けた。



当初は何故そこまで私を?と理由が分からなかったが、彼女を見て直ぐに分かった。



他の家族だって身分がどうだとか、どこの馬の骨だか知らない女と結婚なんてと反対することを言っていたらしいが、私と顔を合わせた瞬間、察したように騙り込み、勝手にしなさいと言った。



そういう訳があって結婚した。


私はお金の為に自分を売り、彼は代替え品をお金で買ったのだ。


逃げないように見えない鎖で繋がれてる。

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