第12話





「いいね。可愛い。よく似合ってる」


「あ、ありがとうございます…」


「色も形も君に合ってるね。素材も触り心地も申し分ない。買って良かった」



最高の褒め言葉を、最高に美しい顔で、最高にドン引きさせながら言うのは、この人だけじゃないだろうか…。


優しいキスを浴びせられながら考える。




望まれた通り新しいドレスに着替えること数分。


当たり前のようにベッドに押し倒され、既に半分以上脱がされそうになっている。



本当に見て感想を言っているのか聞きたくなるような早業だ。


着るなり直ぐ。


着るよりも早く。


ここまで来ると最早脱がす為に着せたとしか思えない。



いいえ、間違いなくそう。




まぁ、こうなるのはちゃんと分かってた。


いつものパターンだから。


使用人達も分かりきった様子で「終わったら呼んで下さい」と言って出ていった。



これが私の仕事。大金への対価。


とはいえ、真っ昼間からドレスを捲られ、興奮した様子で足を撫で回され、ゴクリと喉を鳴らされながらストッキングを脱がされている、この状況。



なかなか受け入れ難い。




「旦那様…、そろそろお仕事に戻らないといけないのでは?」


「問題ない。今日は夕方まで空いてる」


「そうですか…」




僅かな希望を持って言った台詞はあっさりと打ち砕かれた。



今日は夜まで仕事だったはずなのに。


多分、新しいドレスが届いたと知って、わざと時間を空けたんだろうな…。


沢山あった仕事を急いで終わらせまくって。



夕方まで空いてるってことは、それまで付き合わなきゃイケなさそう。



別にいいけど、ちょっと心配。


体力が持つか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る