第11話
「それは良かったです。この辺は緑も多く土地も広大で街よりも空気が良く……」
「やぁやぁやぁっ、僕の可愛い妻よっ!居るかい?」
「わっ、旦那様…」
にこやかに話していたリリィの声を遮ってドアが勢い良く開く。
幼少期から徹底的にマナー講師に躾られてきたとは思えない不躾ぶり。
続けて中に入ってきた眼鏡の執事もお口あんぐりである。
「おや、すまない」
ノックもせずに部屋へ入ってきた館の主は、一旦立ち止まると驚いていたリリィに向かって軽く謝罪を述べた。
そして中を見渡し、ソファに座る私の姿を目に捉えると笑顔を1つ。
凄まじい速さで飛んできた。
そのまま当たり前のように頭を膝に乗せられ、ゴロゴロと甘えられ、人目を憚らずにキス。
いつものように優しい笑みを返したが、内心“現れたな。ド変態…。と悪態をついてしまう。
「ねぇ、エマ。聞いたよ!聞いちゃったよ!君の新しいドレスが届いたそうじゃないか…っ」
「えぇ、まぁ…」
「早く着替えて。今すぐ僕に見せておくれ。さぁ!早く。今すぐっ」
「はい」
勢いに引きつつ、笑顔で頷き、立ち上がる。
新しいドレスか…。
きっと、いつもの展開になりそうだなぁ…、と心の中で考える。
リリィも分かりきったように部屋の準備をいそいそと始めた。
勿論、拒否権は無い。
これが私の役目だ。
侯爵夫人としての。
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