第10話

まぁ、それもこれも全ては弟の為だ。


今年で5歳になった弟は生まれ持っての病気持ち。


治療したら治るらしいが完治させるのに時間と治療費がバカみたいに掛かる。



それこそ裕福じゃない実家の力じゃ払えるものではなく、侯爵様の力を借りなければ私が働いたところで、どうにもならない状況だ。



15も年が離れた小さいあの子は私の生き甲斐。


失うなんて考えられない。



だからこそ、私を妻に欲しがっていた侯爵様との取引とりひきに応じた。


平たく言えば、弟の為にお金で彼に買われたのだ。



勿論、助けて貰って感謝してる。


だから黙って何でも受け入れる。


ニコリと優しく微笑んで、ええ、あなた、はい、そうですね、と。



朝から『ストッキングで僕の顔を思い切りぶって欲しい〜』と頼まれたって今日も可愛い奥様に成り切る。


内心、ドン引きしつつも。

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