第十三話 魔王
第47話
「地球が一個の生命体だって言ったら信じるかい?」
「……はい?」
突拍子もない言葉を前に私の脳みそは停止した。
地球が一個の生命体?
何を言っているんだこのアーサーは。いつもの大法螺か、トンチキか。いずれにせよまともな発言とは思えない。こんなときにふざけないでと、私は声をあげようとしたのだが。
「ガイア理論、ですか」
ぎょっとして目を剥いた。答えたのは菅原さんだ。
突拍子もないアーサーの話に突っ込みを入れるどころか、むしろ追従してよくわからない単語を言っている。
信じられないと言いたげな目つきで見てくる私に何を思ったのか……菅原さんは一つ大きなため息を吐いた。
「ガイア理論は科学的考証と論理に裏打ちされたれっきとした学説ですよ。言い始めたのがアーサーなので信用できないのはわかりますが、そんな目で見ないでください」
「君たちほんと俺への信用ストップ安だよね」
前を行くアーサーが大げさにしょげた顔でため息をつく。
どうせ演技なのはわかっているので、菅原さんも私も何一つ気にかけなかった。
私と菅原さんは二人、アーサーの後について暗闇の中を歩いている。
周囲にはアーサーが作った(というか見せている?)ネオンサインの道の景色。
地面と道の境目を表す直線、光で構成された花、もくもくと雲のような茂みを備える木。
なんとも現実味がない。ゲーム画面のような光景は未だに慣れなくて首が竦む。
菅原さんは異様な景色の中でも全く動じず、相変わらずの無表情で話を始めた。
「生物圏と生物相を一体のものとして捉え、地球自体を一個の生命体とみなす考え方です。大気、海洋、地殻といった生命圏と生物相による生命活動は相互に関係し合いながら環境を一定に保っている。これを生物の恒常性と同質のものと見なし、地球を単一の有機体生物だと解釈する。それがガイア理論です」
「……えっと」
まずい。どうしよう。わからない。
困惑する私の頭からクエスチョンマークが飛び出した。ちなみにこれは比喩表現ではなく事実だ。
蛍光グリーンに輝く「?」マークが私の頭からふわふわ浮き出て、辺りを漂っている。
先頭を歩くアーサーがいたずらっ子のような笑みで私を見ていた。
恐らくアーサーが私の様子を見てはてなマークを出現させたのだろう。本当に腹の立つ奴である。
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