第5話

「ははは、求婚公爵の噂は本当だったとは!まさか娘の父まで守備範囲とは恐れ入った」


「大変申し訳ありません、ルンペル大公。何分あなたのその魅惑的なおひげとふくよかな体の包容力は僕を魅了してやまず……」


「こらこら!何故わしを口説くのか!?隣にこんなに美しい娘がいると言うのに、なあ、お前?」


「ええ、全く失礼しちゃいますわ!でも私、面白い殿方は大歓迎でしてよ。全く、どいつもこいつも判を押したように同じ反応で骨がないったらありゃしない。プレゼントにやれ花だ宝石だの、全員実は同じものを買うように相談でもしているんじゃないかと思ったぐらいですわ」


「ああ、大公令嬢は随分と刺激的をお求めのようで。なんて冒険心に溢れたお方だ、素晴らしい……結婚してください!」


「あはは!この人ったら本当に面白いわ!ねえ父さま、私この方と結婚したい!向こうもこんなに熱烈に求めてくださっているんですもの!」


「ああいいとも、可愛いお前。お前の望みならなんでも叶えてやるともさ!さっそく結婚の日取りを決めなければね。両家話し合いの席を設けて、その後お前たちの住む家の準備を整えなくては。使用人ももちろん一流の者たちを向かわせよう」


「……あの。僕たちが住む家をご用意されると?」


「ああ、もちろん。申し訳ないが君たちの家は我が家の可愛い小鳥が住むには少々手狭だからね。心配するな、嫁入り道具と思ってくれればいい。今のお家は君の弟君にでも任せなさい」


「いえ、その。使用人を新しくご用意されると……」


「ああ。大きい家の管理となると不慣れな者たちでは行き届かない面もあるだろうからね。使用人はそっくり丸ごと、新しい者たちを用意して身の回りの世話に当たらせようじゃないか」


「今の僕の屋敷付きの使用人たちは、一人もついてこない、と」


「うむ。不慣れな使用人を侍らせて、この子に不都合があったら困るからな。一流の者たちをきちんと手配するから安心なさい」


「じゃあいい」


「え?」


「アンがいなくなるなら意味ない。帰る。さよなら」

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