P.178

「南里ちゃん?」


「ん?」



そう呼ばれて顔をあげると、雅人が不思議そうに私を見ていた。



「どうかした?」


「え?あ、別に」



私には考え事をするとぼんやりと立ち止まる癖があるらしい。


気づけば部屋の前で不自然に立ち止まったままだった。



「ん?」と未だに不思議そうに見る雅人を部屋に押しやり自分も入る。



「何考えてたの?」


「あ、……何でもない」


「ん?」



また不思議そうに見てくる雅人の視線から逃げるように、ソファーに横になった。




目をつぶる瞬間、総長様がこっちを見ていた気がした。




他人に興味なんてない。どんな人か知ったところでどうなることでもない。



それなのに、あの時、なぜか『戸塚洸大ってどんな人?』と聞こうとしていた。



どんな人だって関係ないのに。



これから一緒にいることになったとしても、彼はただの護衛…いや、むしろ監視。



私が変なことをしないか見張る役目を受けた、災難な人。



たぶんこのモヤモヤを解消したかっただけ。


最初に見た彼とまるで別人の彼の本来の姿を確認したかっただけ。


そこに深い意味はない、はず。

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