P.171

「なぁ、一つ聞きたいことあんだけど」



さっきまでとは違い、あの時と同じ、真剣さを含んだ声に、足を止めてゆっくりと振り返る。




「お前さ、なんで本当の名前言わねーの?」


「は?本名ですけど」


「そうじゃなくて、」



戸塚洸大が何を言いたいのかわからないほど、私はバカじゃない。



きっと彼が聞きたいのは、‘誰に'、なぜ。そして、本当の´名前’。




「あなたが知ってるくらいだから総長さんたちも知ってるんでしょ?それでもそう呼ばないんだからそれでいいんじゃない?今更わざわざ言うことでもないし。私は呼ぶなとは言ってないよ」



「それもそうだけど…」



「それに、似合わないのよ。私には似合わない。だからって別に嫌ってるわけじゃないから、好きに呼んでくれていいよ」




私はそう言うと、戸塚洸大を置いてスタスタと階段を上った。

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