P.162

と思ったが、



「手ぇ出してみろ」



と、それまで黙っていた総長様が、眉間にしわを寄せ、不機嫌そうな声でそう言うと、怪我してる方の手を掴んだ。




「チッ、無茶してんじゃねぇよ」



しわをより深くさせ、怪訝な顔で掌を見つめる総長様。



そう言う顔も声も怒っているようだったけど、私の手を掴む総長様の手は、壊れものに触れるくらい優しかった。





そして、私の手を掴んだまま、もう片方の手で救急箱を開き、消毒液を取り出した。




「自分でできますから」



まさか総長様が手当てしてくれるとは思わなくて、そう言って掴まれていない方の手を伸ばそうとした。


が、総長様は無言で脱脂綿に消毒液を染み込ませ、そっと傷口に当てた。



消毒液の独特のニオイが鼻につき、手にピリっと痛みが走る。



それを無表情で見下ろす私に対し、顔をしかめながら手際良く手当てする総長様。




どちらも声を発しようとはせず、妙に張り詰めた空気が漂う。

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