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「あのさ、ここがどこだかわかってんの?」



男は壁から体を離し、私の方を向くと、わざとらしく、落ち着き払ったゆっくりとした口調で言った。



その顔は無理やり作ったという感じで、その目は一切笑ってない。




「は?炎雷の溜まり場でしょ?」



男の意図がわからず、当たり前の答えを淡々と返す。




「なんでお前がここにいんの?」


「耀に言われてるんじゃないの?」


「俺は、お前がどういうつもりでいるのか聞いてんの」


「『いろ』って言われてるからいるだけよ。」


「は?護ってもらってんじゃねーのかよ」



私の答えに、作られた笑顔は消え、男は少し声を荒げた。




「悪いけど、私は護ってほしいなんて言ってない。というか、本当は護ってくれなくたっていい」



それでも私はいつものように表情も変えずに返す。




「あ゛?」



「安心して。私はここにいていい人じゃないことくらいわかってるから。姫だなんて勘違いもいいとこ。

私は、仲間ぶる気もないし、ここを荒らす気もない。

本当は、すぐにでもいなくなってあげたいけど、それはまだ無理みたいだから、少しだけ我慢しててくれる?心配しなくても、事が終わればすぐいなくなるから。」



眉間にしわを寄せ、顰め面をする男に、そう淡々と言うと、私は男の横を通りすぎ、奥の部屋の扉を開けた。




そのまま中へ入るまで、男は何も言わなかった。

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