P.105

「まぁ、別にいいですけど。1回で出られるようには努力します。」



そう言って、白いピカピカの携帯電話をポケットにしまった。




最初から、何を言っても私の意見は通らないことはわかっていた。


抵抗の言葉も試しに言ってみただけ。それでどうにかなるとは思ってない。




電話にすぐに出ろと強制されるのは嫌だけど、持ってるくらいは構わない。


荷物がほんの少しだけ増えるだけのこと。




それに、彼らに悪意がないこともちゃんとわかっている。私のためにと思ってやってくれていることも。



それでも、その善意を素直に受け入れられないのは、私の心が狭いせいなのだろう。


たとえ善意でも、自分の望んでいないことを勝手に決めて押し付けられることには、どうしても嫌悪を感じてしまう。


そして、受け入れられない気持ちを隠して、素直に受け取れるほどの器を、私が持ち合わせていないというだけ。

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