P.85

「なんとなく、勝手に開くのは悪いと思って」


「それじゃ意味ねぇだろうが」



私の言葉にそう不機嫌そうに返したのは、隣に座った総長様だった。




「あーはい、だからこれ返します」



そう言って、アパートを出る前に制服のポケットにしまった黒い物体を出す。



が、



「まだ持ってろ」


とばっさり切り捨てられてしまった。



おまけに、「好きに使っていい」とまで言われた。




けれど、人のものを好きに使えるわけがない。






昨日、別れ際に総長様から直々に渡された黒い物体――すなわち携帯電話。




携帯電話をもっていないと言った私に、連絡がとれないと困ると押し付けられたそれは、なんと総長様本人のもの。



そんなものを渡されても迷惑だし、その前に、携帯電話がないと困るんじゃないかと思って断ったけれど、


「いいからとりあえず持っておけ」と威圧的に言われ、仕方なく受け取ったのだった。




その後、いろいろ電話とかがかかってくるんじゃないかと思ったけれど、携帯電話は一度もなることなく、朝一度だけ青いランプがついただけだった。

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