P.63

「耀だ。耀でいい」


「え?あ、耀、さん…?」


「呼び捨てにしろ」


「あ、はい…。えっと、耀、手放してもらえません?」



総長様を呼び捨てしてもいいのだろうかと思ったけれど、本人がそう呼べと言うのだからまぁいいのだろう。




必然的に下から見上げるような形で耀を見ると、


「…チッ」


と、言われた通りにしたのに、なぜか舌打ちをされた。



それに意味がわからないと思いながらも、解放された体を起こし、シートにちゃんと座り直す。



小宮雅人は何がそんなにおかしいのか、ずっとケラケラ笑っていた。




それから、私が素直に車に乗るとは思えないから、あえて正面の目立つところに車を止め、裏門から出るように仕向けたのだと教えてくれた。



そこまでは私の行動が読まれていたというわけだ。



だけど、裏門から出てきたところでピックアップする予定だったのに、そこからも出てこなかったのはさすがに想定外だったようで、


「南里ちゃんはさらにその上を行くねぇ」と小宮雅人はまた楽しそうに笑って言った。



隣の反応は予測できるから、あえて見ないようにした。

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