P.2

吸い込んだ息を吐き出すと、覗き込んでいた頭を上げ、歩道橋の柵からそっと身体を離す。



そして、ゆっくりとあたりを見渡し、ため息をついた。




ここから北に数百メートル離れたところに、新しい綺麗で明るい歩道橋がある。


少し歩くが、南に進めば、人通りの多い交差点がある。



だから、いろんな意味で怖いこの歩道橋を、しかもこんな時間に利用する人は少ない。



けれど、新しい歩道橋や交差点まで行くのが面倒くさい怖いもの知らずの人は、近道でここを利用している。





そんなポツリポツリと人が通るここから、飛び降りるのはやっぱり難しいか。




大抵の人は見て見ぬ振りかもしれない。



だけど、もし身を乗り出したところで邪魔されたとしたら面倒だ。



それに、万が一助かってしまっては、それこそ面倒くさい。




それと、自分がいなくなった後の世界なんてどうでもいいけれど、


それでも、私がここから飛び降りたせいで、他に犠牲者が出るのは申し訳ないと思う。



私が勝手に死にたいだけだ。それなのに、関係のない他人を巻き込みたくはない。





じゃあ、どうすれば?





昨日もここに来て同じことを考えた。



その前は、廃墟ビルに入って、カギのかかった屋上を前にため息をこぼした。



手首にはいくつもの切創痕が痛々しく残っている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る