第9話

「カシ、ただいま」とマツ。

「なにかわかりましたか」というと

ヤナギさん、雪野屋敷のお嬢さんでした。と伝えてきた。

そして調べてきたことを話すと「一徹さんに写真を預かってきたよ。これがヤナギさんの父親だ」といった。

その時だった。「カシおるか。」声が聞こえた。

「ああー親父だ。」という。

「います」といい部屋に通した。

「マツ、一徹さん、元気やったみたいやな。昔わしを助けてくれた恩人や。あの人たちに誓って私は金の貸し借りや人を殺したりはしていない。今は靴職人になっておるみたいだな」というと「親父。雪野屋敷をご存知ですか。」と聞いてみる。

「昔だがあったことは確かだ。光子というお嬢様がおったことは知っておる。とてもお嬢様はピアノが得意でね。腕はプロ級だった。だが亡くなってしまったとお聞きしたときは残念だった。それに紅葉の兄貴分存在である正代が執事を務めとったから覚えておるよ」

「この写真わかりますか」と聞くと「光子お嬢様だ。まちがいない」と言われて「この人はカシが気に入ってるヤナギという娘ですよ」というと、「どういうことじゃ。本当に似ておるの」というと、「彼女は光子様と星野学という青年が残した形見なのでしょう。」とカシがいった。「親父、この娘はヤナギという孤児院で育てられた娘ですよ」とマツ。

「そっか。悲しいのー雪野のご主人はどうしても星野という男が許せなかったのかもしれんが、娘を失ってしまったいわばかわいそうな人じゃ。しかも自分の欲望というのが大きすぎて孫を孤児院に預けるというようなことになってしまって。それに気づいたご主人は孤児院に全財産を寄付する形で償ったのじゃな。」というと悲しそうな顔をした。

「私はヤナギに恋をしてしまったのかもしれません」とカシ。

「わしのカン当たっておったのか。お前たちに恋をしてほしいとおもっておる。」という親父にびっくりした。

「わしは紅葉と一緒になったのは恋をしたからじゃ。今でも紅葉はきれいだしの」というと去っていかれた。

「本当に親父は姐さんを愛してるんだね」というマツ。

カシは正直言ってうらやましいとおもった。

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