第5話

「おい。なんで約束を守れない」という俺にびっくりしてたヤナギ。

「今日は孤児院にピアノ弾きに行ってたの」というヤナギ。

「その前になんでカシさん、ここにいるの」というヤナギ。

「おれは・・・・。最悪だな。お前の後つけてきた。」と正直に話す。

「ふふふ。正直なのね」というヤナギ。

「笑うな」という俺に対して

「かわいい」というからびっくりした。

「ほら、送る」というと手を差し出した。

その手を取るヤナギの手は冷たい。

「カシの手暖かい。」というヤナギ。

初めて女性と手をつないだ俺だった。

「ヤナギ、なんで孤児のやつにピアノを弾きに行くんだ」といった。

一瞬、ヤナギがつらそうな顔をしたが、「私ね。親の顔を知らないの。私、あの孤児院の前に布にくるまれてたんだって。雪野柳というのは私を包んでたあの布の雪野って書いてあって、ヤナギというのはその日孤児院に咲いていた雪柳を見つけて院長がつけてくださったの。雪柳のようにきれいになりますようにってね。だから大切な名前なの。それに孤児院の院長先生は私のピアノが好きでね。よく私のピアノを聞いてくださった人なの。」といった。

「そっか。でその先生は」といった。

「3年前に亡くなったの」というヤナギ。

「そっか。じゃあヤナギの育ての親は院長なのか」という。

「そうよ。私によく言ってくださったのは、「ヤナギ、お前はお前でいい。世の中大変なことばかりだが、きっとお前の笑顔を絶やすことがなければいい人と巡り合う。お前はそして何より優しいよ。その優しさをその人のために使いなさい。そうすればきっとお前は幸せに過ごせるだろう」といわれたの。だから前向きに頑張れたの」というヤナギ。

「おい、ついたぞ、あまり夜はここを通るもんじゃないぞ」という俺。

「わかった。ありがとう。」とヤナギ。

部屋に入るまで見送った俺。

手の冷たい人間は優しいといわれてる。その時、それはこいつのことを言ってるんだって思った。

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