第30話
私はおばあちゃんの家に行った。
仏壇には有紀君の姿がある。
あれから一年たち、法要を行うことになった。
夏見おばさん、あの時有紀君が私をあの家から逃がそうとしてくれてた話は本当なんですかというと、ええー本当よ。あの子から雪ちゃんを引き取れないかって言ってきたのも本当よ。というと、どうしてですかと聞いた私。すると有紀に一回写真を見せたことがあるの。その写真をみて、雪ちゃん笑ってないね。笑った写真がないけど。といってたの。あの子は将来児童福祉士になりたいって言ってたのよ。大友さんとこの渚君が昔赤ちゃんポストに預けられた話をしてたら、僕、そういう子の手助けがしたいといってね。小さいころからあの子は人に思いやりがあるいい子だったわ。と夏見おばさん。
一度もあったことのない私を助けようとしてくれた有紀君、ありがとうと仏壇に手を合わせてそういった。
大友さんの家に行き家に上がってと言って出てきたのはきれいな人だった。
こんにちわ。主人はこの奥の部屋で待ってます。といった。
いつも渚さんにはお世話になってますというと、いやとんでもない。
おい、渚と呼ばれて出てきた渚さん。
雪、もういいのかと言われて、うんというと、今日は泊まって行ってよと言われて困ってる渚さん。渚。たまには母さんのわがままも聞いてやってよと言われて、うんいいよというから四人でご飯を食べることになった。渚さんのお母さんと一緒に台所にたった私。すると雪ちゃんはさすが女の子ね。私には子供が出来なくてね。子宮の病気で子供はあきらめていたの。だけどそんな時養子の話が出てね。渚は生後8か月の時に赤ちゃんポストに預けられていたの。病院から連絡が来てね。すぐ養子縁組して引き取ったの。
世間では冷たい目で見られたこともあったけど、私たちはそんな世間の目は気にしなかったわ。子供が育てられることもあきらめていた私は渚が元気に育ってくれたからうれしいのよという。
あの子が10歳になったある日、友達にお前はもらわれてきたといわれてあの子の心が傷ついたのを知ったわ。
主人は俺が渚と話すよといってくれたの。あの子は本当のことを知っても、俺は神様と生みの親を恨んでないよ。もちろんお父さんお母さんのこともね。本当のことをいってくれてありがとうって私たちにいったのよ。育ててよかったってその時思ったわ。とお母さんが言った。
渚さんお父さんとお母さんのところに帰るときすごくうれしそうな顔するんですよと私がいった。
今日の夕飯は渚の好きな唐揚げと肉じゃがよ。というお母さん。
おいしい食事を一緒に食べた私。
渚さんの部屋に行くと、うちにぎやかだろうと言われたので、うちもお兄ちゃんがうるさいくらいだよというと今は幸せって聞かれたので、うんと笑顔でいった。
渚さん優しいねと伝えた私に渚さんはえっという顔をした。
生みの親を恨んでないってなかなかいえないよ。というと、赤ちゃんポストに入れられたことってよっぽどの事だと思ったんだよ。経済的な理由とかで仕方なく手放したんだよねと思ったんだけど、どんな理由であれ、生まれてくる子供は親を選べないっていうかもしれないけど、俺はちゃんと赤ちゃんポストに預けてくれたことでこの大友家に来た。だから嬉しいんだよ。それって結局さ親を選んでるってことだよね。といった。
そういった渚さんは次の瞬間私の名前を呼ぶ。
雪。と呼ぶとキスをしてきた。
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