第92話

注文を伝え終わって、顔をあげた私はふっと顔をあげた。




健の姿が目に入る。




健は美雪と仲良さげに喋っていて……




そんな2人を見ているとカラオケでの健を思い出して胸が苦しくなった。




「新城さん。聞いてる?さっきからぼーっとしてどうしたんだよ?」




中山君が心配そうな顔で私を覗き込む。




「あ、ううん。何でもない。どうしたの?」




私は無理やり笑顔を作って中山君に聞いた。




「新城さんって堅苦しいから俺もユッキーって呼んでいいかなって思ってさ。」




中山君が鼻の下を指で擦って照れくさそうに言う。




「ダメよー。そんな馴れ馴れしい呼び方。祐希さんって呼べばいいの。チャラ山は。」




私が口を開く前に里恵子がピシャッと言い放つ。




「えぇっ?!そんな…じゃぁ祐希ちゃんは?」




中山君は肩をがっくり落として私を上目使いで見上げた。




なんだか…子犬みたいだし。




「いいよ?好きに呼んでくれれば。」




「じゃぁ、祐希ちゃんにしよーっと。」




中山君はご機嫌でウェイトレスさんが持ってきたジュースを受けとった。

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