第75話

「なぁに?昨日何かあったのー?」




事情を飲み込めていない里恵子が人差し指を口にあてて首を傾げた。




「それがさ、祐希ってば王子と……」




「あぁ…!違う違う!!急いでただけだから」




慌てて手をブンブンと振って美雪の言葉を掻き消す。




美雪ったらお喋りなんだから。




昨日のことはバレないようにしないと……ポロッと誰かに言われちゃいそう。




「ふーん」




里恵子は頷いて私の顔をじっとみた。




うわぁ…。里恵子めちゃくちゃ怪しんでるし……!




「そんなに慌てちゃってー。余計怪しいよー?」




美雪がニヤニヤしながら聞いてくる。




「ホント、何もないから……。あっ、美雪!!健が居るよ!!」




これ以上問い詰められたくなかった私は、ちょうど女の子を押し退けて席に着いた健を指差した。




「あ、ホントだ」




美雪は健の姿を見た瞬間、目を輝かせてそのまま健のところに走っていった。

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