第67話

「俺、下で寝るよ。これ以上祐希のこと傷つけたくない」




そう言って涼は私と目を合わせようとしない。



そんな涼の姿に胸がギュッと苦しくなって、その背中に抱きついて顔を埋めた。




このまま涼と離れたら二度と会えなくなる。




そんな気がした。




「傷ついたりしない。嬉しかったもん……」




涼に…。



涼に抱かれて嬉しかったんだから…。




涼が私のことを愛していなくても私は愛しているんだもん。




「だから……何処にも行かないで」




私の傍から離れていかないで。




他の子なんて愛さずに私を愛してよ。




涼に回した腕の力を強める。




そんな私に涼は振り向いて優しく微笑んでくれた。




「わかった。ずっと傍にいるから……。今日はもう遅いし。寝よう?」




涼はにっこりと笑って私の肩を押さえて優しく寝かせてくれた。




そのまま頭を撫でてくれる。




いつもの涼だ…。




涼の笑顔と温もりに安心した私はそっと目を閉じた。




涼が悲しい目をしていたことなんて気付かずに。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る