第66話

私は涼を傷つけてしまった。




涼はいつでも私を大事にしてきてくれたのに……。




自分がしてしまった過ちの重さに今更気づく。




「俺のこと、嫌いにならないで」




涼の私を抱き締める力が強くなる。




嫌いになんてなるわけない。




嫌いになんかなれるわけないよ。




こんなにも大好きなのに……。




「嫌いになんてならないよ」



「……ごめん」




涼は声を震わせてそう言った。




それは私の気持ちに対して「ごめん」って言ってるように聞こえて胸が痛んだ。




「涼は何も悪くない。悪いのは私だから……。だから、謝らないで」




そう言って涼にそっとキスをした。



でも、涼は悲しそうな顔で私を見る。




「好きでもない男にそんなことしちゃダメ」




そして、そう言った後ベッドから上半身を起こした。




「涼……?」




涼は呼び掛ける私の頭をポンと叩いて落ちていたシャツを羽織り出す。

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