第62話

「……痛っ」




背中と頭を打ち付けて少しクラッとする。




涼はベッドに倒れた私の上に跨がると制服のネクタイに指をかけた。




「……そんなに男に抱かれたいんだ?」




ネクタイがシュッと音をたてて、ほどけていく。




いつもとは全然違う顔と声。




眉間に皺を寄せて低い声を出す涼が少し怖くて体が震えた。




「だったらさ……」



「……っ、」



「他の男に抱かせるくらいならさ、俺に抱かれてよ」




そう言い終わると同時に唇が落ちてきた。




涼を怒らせてしまった、そう思っていたのに……。




「ん…っ」




啄むように何度も繰り返されるキスは、優しくてあの思い出のファーストキスと何も変わらない。




そっと唇を舌でなぞられて、くすぐったいような気持ちいいような感覚が押し寄せる。



それと同時に甘ったるい声も。




「あんまり煽んないでよ」




リボンを外しながら耳元でそう囁かれて、恥ずかしさに目をギュッと瞑った。




全身が熱くなって思わず涼のシャツをギュッと掴む。




涼は優しく微笑むと私の指を絡めとって指先にキスを落とした。

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