第61話

「……待って」




ベッドから下りて立ち上がったら涼が私の腕を掴んだ。




その掴む力がかなり強くて腕がキリキリと痛む。



思わず痛さに顔歪ませると、掴む力が少しだけ弱まった。





「なに…?」



「どこに行くの?」




視線を合わせることなく、涼は低い声で私に尋ねてくる。




涼、怒ってる……。




でも、もう後には引けない。



引けないんだよ、涼……。




「……涼には関係ない」




掴まれた腕を引き剥がすと、涼は傷ついたように顔を歪ませた。




どうしてそんなに悲しそうな顔をするの?




私のことなんて何とも思っていないくせに……。





「祐希、他の男に俺にしたようなこと……しちゃダメだよ?」



「別に…。私の勝手でしょ……?」





そう言って部屋を出て行こうと涼に背中を向ける。



その瞬間、涼は私の腕を再び掴んで力強く引き寄せた。




そのまま体を押されて放り込まれるようにベッドに倒れこむ。

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