第56話

そう思ったら胸が苦しさでいっぱいになった。



今まで……涼が傍にいるのが当たり前だった。



何の根拠も無いのに勝手に思い込んでた。



涼は私の隣にずっといてくれるって。




でも、そんなの私の勘違いだった。



涼は私以外の女の子の隣に行っちゃうんだ。



好きな子の隣に……。



そんなの嫌だよ。



涼が傍にいなくなっちゃうなんて嫌だ。




「祐希は?好きな人…いるの?」




今度は逆に涼から質問された。




「……いるよ」




少しだけ迷った末に伏し目がちに頷く。




涼だよ。涼が好き。って言ってしまいたい。



でも、涼には好きな人がいるんだもん。



言っても困らせるだけだ……。



それに、はっきりと振られるのが怖くて言えそうもない。




もう泣きそうになってきた。




「それって…健?」




健……!?



思っても見なかった人物の名をあげられて驚きに目を見開く。




「やっぱり…健なんだ?」




驚きすぎて固まってたら、肯定していると捉えたのか涼は私から目を逸らして俯いた。




「違う…!私が好きなのは健じゃない」




慌てて否定の言葉を繋ぐ。



私が好きのは涼なのに。



涼が大好きなのに……。

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