第52話

でも、涼はしがみつく私を離すことなく、そっと抱き締め返してくれた。




それが凄く嬉しい。



涼の優しさが凄く暖かく感じて、背中に回した腕の力をさらに強める。





「涼……」



「……ん?」



「今日ね、」



「うん」



「今日、涼の家に遊びに行ってもいい?」




1人になったら……



健のことを思い出して、また悲しさでいっぱいになる……。



そう思った。




「え…?でも、明日学校だよ?」



「……お願い」




私のお願いに涼はちょっと困った顔を浮かべる。



でも、今日はどうしても一緒に居て欲しくて。



我儘なのはわかってるけど、甘えるように涼の胸に顔を擦り付ける。




「仕方ないなー」




涼はそんな私に小さくため息をつくと、いつもと同じように優しく笑った──。

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