第37話
「健……?」
健のただならぬ雰囲気に急速に不安になる。
そのまま呆然と健を見つめてたら、健はニヤニヤと口元を緩ませながらベッドの側まで歩いてきた。
「な、なに……?」
何なの…?その怖い笑顔はなに?
いつもとどこか様子が違う健が怖くてベッドに座ったまま後ずさりをする。
「お前もついに女に……」
「なってないし……!」
「一晩同じ部屋で寝て何もなかったわけねぇだろ?」
健はベッドの上に乗ってジリジリと私に少しずつ近付いてくる。
この前のキス未遂の時といい、最近の健は変だ。
涼と違ってスケベだし。
「何もしてないってば!」
「嘘つけ」
近づく距離を離そうとベッドの上で後ずさりを続ける。
でも、壁に背中が当たって直ぐに逃げられなくなった。
そんな私を嘲笑うように、健の唇が徐々に近づいてくる。
このままじゃキスされちゃう?
そんなの嫌だ……。
「本当に何もしてない!すぐに寝たもん!」
恐くなって大声を出す。
自分でもビックリするくらいかなり大きな声が出た。
バクバクしている心臓を落ちつけようと肩で息をする。
そんな私を健はじっと見つめる。
探るような目で。
「ふーん。だったら別にいい」
「……え?」
「帰る」
そして目を伏せてポツっとそう呟くと、あっさりとベットから下りて部屋を出ていった。
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