第15話

「ぷっ……はははははっ!」




暫く呆然としていた健は急に体を震わせながら大声で笑い始めた。




「たけ…る?」



「冗談だよ。するわけねぇし」




健はケラケラ笑いながら私の頭を軽く叩く。



悔しくて涙が零れた。




冗談にしても酷いよ。



健にとっては軽いノリでも私は真剣に怖かったのに。




「悪かったって。そんな怒んなよ」



「怒るに決まってるでしょ?」




眉を顰めてみても、健は気にする素振りすら見せずに笑い続ける。




反省している様子が全くない。




「ま、そういうわけで俺は教室に戻るわ。じゃあな」




暫く笑い続けていた健は、ニカっと笑うと手をひらひらと振って教室に戻って行った。




ホント、冗談きついよ……。



一度止まった涙がまた込み上げてくる。




「……祐希」




涙が頬に零れ落ちた瞬間、耳元で涼に名前を呼ばれた。




そうだ。


健のことに気を取られてすっかり忘れてたけど……。



私、涼に抱き締められたままだ。




チラッと覗き見てみたら、思っていたよりも涼の顔が近くて。



ドキっと胸が高鳴る。




「あ、えっと……はは」




さっきのことが気まずくて笑ってみたけど、涼は黙ったまま口を開こうとしない。




もしかして、まだ怒ってる?



どうして怒ってるんだろう…。



それよりお礼を言わなきゃ……。




「あの、ありがとう……」




視線を前に向けたまま、涼の腕にギュッとしがみつく。




黙っていた涼は体をそっと離すと私の顔を覗き込んできた。

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