第13話

「あぁ、わりぃ。キスもしたことねぇお子様には無理だよな?」




狼狽える私を健はバカにしたように鼻で笑う。




あぁ…ダメだ。



目頭が熱くなってくる。




健はいつも私に意地悪なことばっかり言うんだもん。



チビで童顔なこと気にしてるのに。




「私、キスしたこと…あるもん」




涙が零れ落ちそうになるのをグッと我慢して健を睨む。




でも、私の小さな抵抗はあっさりと打ち砕かれ、健はお腹を抱えて笑い始めた。




「嘘つくなって。お前みたいなお子様を相手にする男なんているわけねぇし」



「嘘じゃないっ!本当にしたことがあるんだから…!!」




嘘はついてない。



涼としたんだから。



但し、5歳のときにだけど……!




「誰とだよ?」




健は真剣な顔で言い切った私を見て笑うのを止めた。



それでも余裕を持った笑みを浮かべてる。




健は私と涼がキスしたことを知らないんだ?



『涼とだよ』って言っても信じてくれるかな?



子供の頃からいつも3人で一緒にいたし、健のことだから『嘘つくなよ』って鼻で笑いそう。




言うか言わないか迷った末に私は口を結んで俯いた。



そんな私を健は黙って見下ろす。

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