第12話

授業前で人気の少なくなった廊下を通り抜けて、私は屋上に続く階段の踊り場で立ち止まった。




腕を離した私を健は面白いものでも見るようにニヤニヤ笑いながら見下ろしてくる。




「なんだよ?」



「健、美雪と本気で付き合う気はあるの?」




静かな廊下に私の声が響く。




健が美雪と本気で付き合うなら祝福するけど、遊びで付き合うならやめて欲しい。



遊びで付き合っても美雪を傷つけるだけだもん。




「は?遊びに決まってるだろ?」




健は片眉を上げてバカにしたように小さく吹き出す。



やっぱり。


美雪のことをハーレムの一員にするつもりなんだ……。




あっさりと遊びだと認めて笑う健に腹が立ってくる。




「本当……、健は女の子のカラダにしか興味がないんだねっ!!」



「俺が女にカラダだけを求めようが、誰と付き合おうが、お前には関係ねぇよ」




私の言葉に怯むことなく、健はズボンのポケットに手を突っ込んで目を細めて笑った。




言葉が出てこない。



確かにそうだもん。



健の恋愛に私が口を挟む筋合いなんてない。



美雪だって喜んでたし…。




でも、美雪が遊ばれるってわかっているのに、このまま黙って見過ごすことは出来ないよ。




「まぁ、お前が代わりにヤらせてくれるなら、芦田と付き合うのやめてやってもいいけど?」




言い返せずにいた私の頭を健がポンと叩く。



あり得ない交換条件つきで。




「な、なにそれ……」




どうして私が健とそんなことをしなくちゃいけないの……!



うん。わかった。なんて言えるわけないじゃん。

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